2018年03月

2018年03月05日

2017年下半期のBest Act


gosai

 


【作品部門】
1.劇団壱劇屋『五彩の神楽

2.
ルドルフ『まつろはぬものの記-探訪 宇治拾遺物語-』
劇団「劇団」『1000年の恋』

作品部門の1位は、劇団壱劇屋が5ヶ月連続でノンバーバル(台詞なし)殺陣芝居の新作を上演した『五彩の神楽』シリーズ。「それぞれの作品で出来にバラつきがあるので、単体で評価した方がいいのでは」との声もあったが「1ヶ月ごとに新作を打つだけでもすごいのに、新しい殺陣にも挑戦していた。一つのパッケージとして、まとめて評価すべき」との声に押されて、この形に落ち着いた。「ノンバーバル芝居に関しては、今は関西の方が元気がいいということの象徴」との声も上がっていた。
 
2位は、平安時代の説話集「宇治拾遺物語」から2本の作品を取り上げた、ルドルフ『まつわろはぬものの記』。金戒光明寺の境内で、昼夜でプログラムを変えて上演した舞台は「お寺という借景や衣裳の効果もあって、タイムスリップした気分に。平安時代の人々が、当時この作品をどう受け止めたのかが伝わる気がした」と、古典作品の舞台化として高く評価された。
 
3位は劇団「劇団」の『1000年の恋』。外部との関わりを持たない街を舞台にしたSF群像劇は、観た人の数こそ限られていたものの「シンプルだけどちゃんとテーマがある正統派のエンターテインメント。展開がわかっていても興奮できるし、構成と見せ方が見事。ポスト・ピースピットはこの劇団だと思う」と、かなり熱い支持を集めてのランクインとなった。また劇団「劇団」の件に付いては、こちらの追記も参照していただきたい。
 
役者部門の1位は、土田英生セレクション『きゅうりの花』で、理屈臭い自然農農家を演じた諏訪雅。閉鎖的な村ならではのおかしくも苛烈な人間模様を描いた本作は、役者全員のアンサンブルが高く評価されたが、その中でも「ヨーロッパ企画で鍛えたアンサンブル力をフルに生かしただけでなく、ナチュラルな意地悪さを、嫌味と笑いのギリギリで演じ切った点を一番評価したい」との声があり、全出演者を代表する形での1位獲得となった。

2位は、女子プロレスを舞台に繰り広げられる友情と愛憎を描いた、劇団子供鉅人『チョップ、ギロチン、垂直落下』 で、ヒール(悪役)を押し付けられるプロレスラーを演じたうらじぬの。「公演後にリアルにレスラーデビューを飾ったのも納得の身体能力の高さ」と同時に「“ブスは主役になれない”という際どいテーマの中で、共感できるブスキャラをサラリと構築していた」点も高く評価された。

3位は、今年度の岸田國士戯曲賞最終候補にノミネートされた、突劇金魚『少年はニワトリと夢を見る』で、小説家志望の「村上くん」を不気味に好演した山田まさゆき。「
出来が良くないキャラに無理がなく、病んでいる感じに迫力があった。変な役をやらせたら、今の若手では最高の役者では」と、次世代の怪優候補として期待する声が上がっていた。

ランクインはしなかったものの、高く評価された主な作品は、iaku『ハイツブリが飛ぶのを』、男肉 du Soleil『リア王』、ヨーロッパ企画『出てこようとしてるトロンプルイユ』など(上演ユニット名50音順表記)。主な役者は、秋月雁くじら企画『サヨナフ』)、高安美帆アイホール『さよなら家族』)、はしぐちしん虚空旅団『アトリエのある背中』)など(50音順表記)。

また2017年は上半期・下半期とも、作品・役者部門とも、突出して支持されたものがなく、全体的に激しく拮抗していたこと。さらにランク外のものとも、さほど差が開いていないという結果になったことが印象深かった……ということも特筆しておく。

※文中敬称略
 


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2018年03月04日

関西Best Act 再演部門設置のお知らせ

これまでの「関西Best Act」の話し合いでは、間違いなくベスト3級の舞台でありながらも「ある程度のクオリティが最初から保障された“再演”だから」と、選考から対象外となった作品がいくつか存在しました。
一部の日本演劇界でも、再演作品はやや不遇な扱いを受けている状況があり、「関西Best Act」も“新作至上主義”に拍車をかけている恐れがありました。そこで「関西Best Act」では、現在の状況に一石を投じる意味でも、2018年上半期の話し合いから「再演部門」を設置することにいたしました。対象となる作品が絞られるため、この部門はベスト3ではなく、ベストの作品1本のみの選出とさせていただきます。
また「新作」と「再演」の明確化のために、以下のガイドラインを設けました。
(注:2022年にガイドラインを更新しました。コチラをごらんください)

  • 過去に一度以上、関西での上演実績がある作品を「再演」とします。関西エリア以外で上演実績があっても、関西での上演が初となるものは、新作扱いとします。またリーディングなど上演形態の異なるトライアル公演は、上演実績に含みません。
  • 過去の上演と演出・俳優が異なっても、先の上演と同じ団体名義で、基本的に前回と同じ戯曲を使用して上演した場合は、再演扱いとします。
  • その戯曲の作者自身が大幅なリライトを行い、新作同様の戯曲での上演になったと話し合いの中で判断された場合は、新作扱いとします。
  • 既成戯曲での上演は、過去にその作品の上演実績がない団体・個人が上演した場合、新作扱いとします。
  • テキストに寄らないダンス・パフォーマンス系の作品に関しては、過去上演の振付やコンセプトなどを引き継いでいるかを判断した上で、話し合いの中でいずれに該当するかを判断させていただきます。
  • 役者部門に関しては、新作・再演作の区別は付けません。すべての舞台を対象とします。

2017年下半期の話し合いにてトライアルを行い、その中で観客側にも「再演ならではの評価の視点」という、新作とは異なる視点があることを感じることもできました。「再演部門」を設けることは、再演を考える方々への後押しや励みになるだけではなく、観客にとっても舞台の見方に変化を与えられるのではないかと期待をしています。



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