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2020年04月03日
2019年下半期のBest Act
【作品部門】
1.DULL-COLORED POP『福島3部作・一挙上演』
2.iaku『あつい胸騒ぎ』
作品部門は、上記4つの作品がほぼ均等な評価を集めたが、福島第一原発をめぐる50年に渡るドラマを、ターニングポイントとなる3つの時代に分けて描いた物語を一挙に上演した、DULL-COLORED POPの大阪公演がわずかにリードして、初のベストに輝いた。関西圏以外の劇団の作品がベスト1に選ばれたのは、NODA・MAP『THE BEE』が2012年の上半期ベストに選ばれて以来7年ぶり。「それぞれの時代でテイストを変えた3作品を、一気に観ることで圧倒感が増した」「3.11という最大のネタバレを知っていても、人間関係のゴタゴタが不幸を巻き起こす様に惹きつけられた」と熱い評価が寄せられた。
2位は「どれも甲乙つけがたい」という理由で、3作品が同率2位に。若くして乳がんになった娘とその母の、それぞれの恋愛を描いたiakuには「キャスティングが的確。二人の関係の変化が味わい深く、実在の人物として感情移入した」との声が。
『怪人二十面相』をベースに、様々な江戸川乱歩作品をコラージュした舞台を見せたサファリ・Pには「乱歩の文章を通して、人間の身体の魅力がにじみ出てくる。グロテスクな気持ち悪さが素敵なものと思える世界」というコメントが。
暴力がはびこる家族経営の会社を舞台に、性同一性障害を抱える人物の葛藤を描いたももちの世界は「性同一性障害の人の心境に大きく踏み込むことで、さらに高いレベルに到達した。関西弁の台詞も心地良い」などの声が、それぞれ寄せられた。
2位は「どれも甲乙つけがたい」という理由で、3作品が同率2位に。若くして乳がんになった娘とその母の、それぞれの恋愛を描いたiakuには「キャスティングが的確。二人の関係の変化が味わい深く、実在の人物として感情移入した」との声が。
『怪人二十面相』をベースに、様々な江戸川乱歩作品をコラージュした舞台を見せたサファリ・Pには「乱歩の文章を通して、人間の身体の魅力がにじみ出てくる。グロテスクな気持ち悪さが素敵なものと思える世界」というコメントが。
暴力がはびこる家族経営の会社を舞台に、性同一性障害を抱える人物の葛藤を描いたももちの世界は「性同一性障害の人の心境に大きく踏み込むことで、さらに高いレベルに到達した。関西弁の台詞も心地良い」などの声が、それぞれ寄せられた。
これ以外にも、ベスト3には入らなかったけど高く評価された主な作品は(ユニット名50音順に表記)、劇団壱劇屋『空間スペース3D』、NODA・MAP『Q:A Night At The Kabuki』、庭劇団ペニノ『蛸入道 忘却ノ儀』など。
【役者部門】
3.村角ダイチ(ABCホールプロデュース『ジェシカと素敵な大人たち』)
『カンザキ』で、性同一性障害を抱える主人公を演じたのたにが、圧倒的な票を集めて初のベスト1に。「自分は男なのになぜこんな身体なのか? という絶望がリアルに伝わる。社長に対して複雑な思いを抱える様など、難しい役柄をよくぞ体現してくれた」と絶賛の声が集まった。
2位は、ラブホテルに入ったカップルの、初々しくもエロいやり取りを見せた「匿名劇壇」の芝原が、この舞台を観た人からもれなく票を集める形でランクイン。「影マイクで聴こえる暗闇でのやり取りがカワイイだけでなく、女性の本性までさりげなく伝わってくる塩梅が秀逸」と評価された。
3位は、アメリカンテイストのコメディで母親役(!)を熱演した村角。「THE ROB CARLTONの『マダム』の時より女性役のレベルがアップ。しっかりと“憧れの母親像”を体現していた」などの声が上がっていた。
2位は、ラブホテルに入ったカップルの、初々しくもエロいやり取りを見せた「匿名劇壇」の芝原が、この舞台を観た人からもれなく票を集める形でランクイン。「影マイクで聴こえる暗闇でのやり取りがカワイイだけでなく、女性の本性までさりげなく伝わってくる塩梅が秀逸」と評価された。
3位は、アメリカンテイストのコメディで母親役(!)を熱演した村角。「THE ROB CARLTONの『マダム』の時より女性役のレベルがアップ。しっかりと“憧れの母親像”を体現していた」などの声が上がっていた。
ベスト3には入らなかったけど、高く評価された主な役者は(50音順に表記)、松たか子(NODA・MAP『Q:A Night At The Kabuki』)、や乃えいじ(PM/飛ぶ教室『港でカモメがやすんでる日はね、千帆ちゃん』)、山田まさゆき(突劇金魚『墓場のオサムと機嫌のいい幽霊』)など。
「該当作品なし」という意見が少なからずあった中、あごう自身とその先祖と見なされる貴族の、それぞれの私小説的な物語を、パフォーマンス色強く見せた舞台の再演が一位に選ばれた。「新たに荘厳な音楽を入れ、儀式的な妖しい雰囲気になったのが効果的。おもらしのシーンのリアルさを始め、より触覚を強く感じさせる舞台に進化していた」などのコメントが寄せられた。
その他に評価された再演作品は(ユニット名50音順に表記)、オパンポン創造社『最後の晩餐』、キノG-7『今は昔、栄養映画館』『眠レ、巴里』(二本立て)など。
※文中敬称略
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2019年08月14日
2019年上半期のBest Act
「FUKAIPRODUCE羽衣」の糸井幸之介を脚本・演出・音楽に迎え、古典の名作を現代的な音楽劇に変換した「木ノ下歌舞伎」が初のベスト1を獲得。「古典戯曲をリスペクトしつつ壊す、そのバランスが毎回絶妙。老若男女あらゆるキャラのリアルな心象を見事に歌にしてみせた上、謎多き玉手御前のキャラに納得の解釈を与えることができた今回の作品は、クオリティが頭一つ抜けている」と絶賛の評が集まった。超短編の話を立て続けに見せる「フラッシュ・フィクション」の手法を使って、劇団のドロドロした内情を描いた2位の匿名劇壇には「“きまり悪さ”をエンタメにしつつ、マンネリにならないのが彼らの魅力。言いたいことや面白いことを短時間でズバッと切る、フラッシュ・フィクションとの相性も良かった」との声が。宇宙飛行士の娘たちの、世界どころか宇宙を股にかけた逃避行を描いたユリイカ百貨店は「小さなアトリエの公演とは思えないスケールの物語で、本当に宇宙に連れてってもらったような気分。最後は泣くとは思ってなかった」とのコメントが寄せられた。
これ以外にも、ベスト3には入らなかったけど高く評価された主な作品は(ユニット名50音順に表記)、オフィスコットーネプロデュース 改訂版『埒もなく汚れなく』、T-works『THE Negotiation』、MONO『はなにら』など。
3.伊勢村圭太(THE ROB CARLTON『STING OPERATION』)
ハイファッション雑誌の撮影現場を舞台にしたコメディで、カメラマンを演じた前田晃男が、同舞台を観た観客からの絶大な支持を集めて一位を獲得。「かっこ悪いけどカッコいい、巻き込まれ型のキャラクターが本当によく似合う俳優。無理を押し付けられても結局すべてを引き受けるカメラマンは、その象徴みたいな役だった」との評が。2位は山内圭哉と組んだオムニバスコント公演で、久々に大暴れぶりを見せつけた福田転球。「あの山内さんが笑いながら黙って観てるしかなくなるというのが、その凄さを表してる。一人ミュージカルのシーンが特に最高だった」という意見が出ていた。3位は同率で、収賄のおとり捜査のターゲットとなる政治家を演じた伊勢村圭太と、ひたすらバイトたちに運ばれる死体役を演じた山下残が選ばれた。伊勢村には「茶番に突き合わされつつも、ひたすら紳士的に対応する姿に感服。政治家はこうあってほしいとまで思った」、山下には「呼吸すら感じさせない、リアルな死体ぶりに圧倒された。彼の存在なくしてあの舞台は成立しなかった」という声が寄せられた。
ベスト3には入らなかったけど、高く評価された主な役者は(50音順に表記)、延命聡子(中野劇団『10分間2019~タイムリープが止まらない~』)、三上市朗(T-works『THE Negotiation』)、宮崎秋人(『COCOON』)など。
居酒屋で、わずか10分間の時間を延々と繰り返す羽目になった女性の奮闘を描き、3年ぶりの再演となった中野劇団の代表作が、ぶっちぎりとも言える支持率の高さで選ばれた。「もはや関西小劇場の古典。以前は単に笑える作品だったけど、今回はちょっとホラーテイストが入っていたのが新鮮だった」と、演出・演技面で新たな解釈を加えた所に好評の声が上がっていた。
他に名前が上がった作品は、THE ROB CARLTON『STING OPERATION』、ばぶれるりぐる『ほたえるひとら』など。
※文中敬称略
他に名前が上がった作品は、THE ROB CARLTON『STING OPERATION』、ばぶれるりぐる『ほたえるひとら』など。
※文中敬称略
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2019年02月17日
2018年下半期のBest Act
【作品部門】
1.ヨーロッパ企画『サマータイムマシン・ワンスモア』
2.THE ROB CARLTON『SINGER-SONGWRITERS』
3.iaku『逢いにいくの、雨だけど』
【役者部門】
1.中川晴樹(THE ROB CARLTON『SINGER-SONGWRITERS』、他)
2.緒方晋(庭劇団ペニノ『笑顔の砦』RE-CREACION)
3.古谷ちさ(橋田ゆういちろうのカンパニー『ちー茶ん』)
1.ヨーロッパ企画『サマータイムマシン・ワンスモア』
2.THE ROB CARLTON『SINGER-SONGWRITERS』
3.iaku『逢いにいくの、雨だけど』
【役者部門】
1.中川晴樹(THE ROB CARLTON『SINGER-SONGWRITERS』、他)
2.緒方晋(庭劇団ペニノ『笑顔の砦』RE-CREACION)
3.古谷ちさ(橋田ゆういちろうのカンパニー『ちー茶ん』)
【再演部門】
KUDAN Project『真夜中の弥次さん喜多さん』
作品部門、役者部門、再演部門のベスト作品に関しては、こちらで記事を書かせていただいてますので、ご参照ください。
関西のベスト舞台賞、ヨーロッパ企画に(Lmaga.jp)
作品部門2位は、2018年上半期と同じくTHE ROB CARLTONが獲得。「平安時代ならではの衣装や美術のしつらえや立ち振舞が完ぺき。ゆったりしたペースでも“テンポが良い”という感覚は成立できるのも発見だった」との言葉が。3位は、大きな傷を抱えた2家族の葛藤と再生を描いたiakuの新作。「キワキワの所にいる人たちのやり取りに惹きつけられた。階段状の美術の使い方も上手い」と評価された。
ランクインはしなかったものの、高く評価された主な作品は、地点『だれか、来る』、庭劇団ペニノ『笑顔の砦』RE-CREACION、ばぶれるりぐる『ほたえる人ら』など。
役者部門2位は、庭劇団ペニノ『笑顔の砦』RE-CREACIONで、主役の中年漁師を豪快かつ繊細に演じた緒方晋。「ナチュラルなおっさんぶりが、舞台に大きなリアリティを持たせていた。作・演出のタニノクロウが、彼の面白さを熟知したからこそ生まれたキャラ」と、2016年上半期に緒方がベスト役者に選ばれた『ダークマスター』に続いて、愛称の良さを発揮する結果に。3位は、橋田ゆういちろうのカンパニー『ちー茶ん』で、ヒロインを演じた「空晴」の古谷ちさが初のランクイン。「えげつないネタに対して、朝ドラ風の爽やかさを頑張って貫き通したことを評価したい」と、その健気な(?)演技が称賛された。
ラインクインはしなかったものの、高く評価された主な役者は、高橋映美子(虚空旅団『きつねのかみそり』)、満腹満(THE ROB CARLTON『SINGER-SONGWRITERS』)、村角ダイチ(『Small Town,Big City~大阪でひろった4つの小石~』)など。
再演部門で他に名前が上がったのは、ヨーロッパ企画『サマータイムマシン・ブルース』、四獣×玉造小劇店『ワンダーガーデン』など。なお庭劇団ペニノ『笑顔の砦』RE-CREACIONは、作品自体はベスト級のクオリティと評価されながらも、新作扱いとするか再演扱いにするかで意見が分かれたため、どちらからも圏外になってしまったということを、特に記しておきたい。
※文中敬称略
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2018年08月19日
2018年上半期のBest Act
【作品部門】
1.ITOプロジェクト『高丘親王航海記』
2.THE ROB CARLTON『マダム』
3.トリコ・A『私の家族』
作品部門1位となったのは、人形劇としては初のベストとなったITOプロジェクト『高丘親王航海記』。「よくこんな人形を作ったとしか思えない、ありえない人形の数々に驚かされた。夢と現実、生と死が次々と入れ替わる世界観は、人形劇だからこそ効果的に見せられた世界」との声が上がった。
2位は、近年作品部門トップ3の常連となりつつあるTHE ROB CARLTON『マダム』。「全体的にクオリティが上がり、商業演劇に近い完成度。招待状を模した公演チケットが、物語のキーになる仕掛けも憎い」などの意見が。
3位は、尼崎事件をモデルにしたドラマを見せたトリコ・A『私の家族』。「ひたすら不愉快なのに、その純度が高すぎて目が離せなくなる。真綿で首を絞められるようにジリジリ追い詰められていく感じがすごかった」と、その壮絶な世界観が評価された。
ランクインはしなかったものの、高く評価された主な作品は、城山羊の会『自己紹介読本』、劇団飛び道具『緑の花』、プロジェクトKUTO-10『財団法人親父倶楽部』など(上演ユニット名50音順表記)。
2.竹内宏樹(ももちの世界『鎖骨に天使が眠っている』、他)
2.三上市朗(THE ROB CARLTON『マダム』)
※同順位の役者は50音順で表記
竹内には「突劇金魚で観た時のパフォーマンスとは全然違うのに驚いた。リアルながらも純度の高いたたずまいは、今後に大いに期待できる」。三上には「“バカかっこいい”の局地。物語全体にちゃんと“貴族感”があふれてたのは、三上さんが中心にいたことが大きい」との声が、それぞれ寄せられた。
【再演部門】
匣の階『パノラマビールの夜』
2.三上市朗(THE ROB CARLTON『マダム』)
※同順位の役者は50音順で表記
役者部門1位は、自ら立ち上げた演劇ユニット・T-worksで、後藤ひろひとの名作三人芝居に挑戦した丹下真寿美が初のベストに。「脇を固める役が多い印象だったけど、中心に立ってその魅力が100%の力で発揮されていた。特に一話のコメディエンヌと二話のピュアな子どもキャラの落差がすごい」と、ぶっちぎりに近い指示を集めた。
2位は、ももちの世界『鎖骨に天使が眠っている』で主人公の同級生役を演じた竹内宏樹と、THE ROB CARLTON『マダム』で、主人公のマダムの息子で、一家の当主役を演じた三上市朗が同率でランクイン。
2位は、ももちの世界『鎖骨に天使が眠っている』で主人公の同級生役を演じた竹内宏樹と、THE ROB CARLTON『マダム』で、主人公のマダムの息子で、一家の当主役を演じた三上市朗が同率でランクイン。
竹内には「突劇金魚で観た時のパフォーマンスとは全然違うのに驚いた。リアルながらも純度の高いたたずまいは、今後に大いに期待できる」。三上には「“バカかっこいい”の局地。物語全体にちゃんと“貴族感”があふれてたのは、三上さんが中心にいたことが大きい」との声が、それぞれ寄せられた。
ランクインはしなかったものの、高く評価された主な役者は、青柳いづみ(川上未映子×マームとジプシー『みえるわ』)、保(プロジェクトKUTO-10『財団法人親父倶楽部』)、村角ダイチ(THE ROB CARLTON『マダム』)など(50音順表記)。
【再演部門】
匣の階『パノラマビールの夜』
新たに設けられた再演部門で初の一位に輝いたのは、「第5回OMS戯曲賞」佳作作品を20年ぶりに再演した、久野那美が率いる「匣の階」の『パノラマビールの夜』。その内容だけでなく「20年前の舞台は観ていないが、山中のビアガーデンをリアルに再現するなど、初演より明らかに精度とクオリティを上げた舞台だったと思う」と、再演の意義を評価する声に後押しされた。
※文中敬称略
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2018年02月13日
2017年下半期のBest Act(再演部門トライアル)
「概念」を奪う宇宙人に、静かに侵略されていく日常を描いたSF風人間ドラマを、黒沢清監督による映画版公開のタイミングで、6年ぶりに再演。「演出にも役者たちの演技にもスキがなくなり、進化も深化も濃くなっていた」と、戯曲自体の強度はもちろん、前回の上演より格段にクオリティを上げてきた点が高く評価された。また「大阪初演(2007年)では侵略する側だった内田慈が、ある意味地球を救う側の立場になっていたのが感慨深かった」と、何度もリバイバル上演されている作品ならではの感想もあった。
その他に名前が上がった作品は、くじら企画『サヨナフ』、匿名劇壇『悪い癖』、庭劇団ペニノ『ダークマスター2017』など(上演ユニット名50音順)。また、土田英生セレクション『きゅうりの花』も、このユニットでは初上演だが、作・演出の土田自身がこのユニットを「自らの作品を再演する場」と位置づけているため、再演部門の対象とした。
【追記】
2017年度下半期作品部門のベスト3に選ばれた劇団「劇団」『1000年の恋』は、結果発表後に再演作品であることが判明しました。その時は誰も再演であることに気づかなかったため、今回食い違いの出る結果となったことを反省した上で、次回以降につなげたいと思います。
2017年度下半期作品部門のベスト3に選ばれた劇団「劇団」『1000年の恋』は、結果発表後に再演作品であることが判明しました。その時は誰も再演であることに気づかなかったため、今回食い違いの出る結果となったことを反省した上で、次回以降につなげたいと思います。
※文中敬称略
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